日本酒って
酒税制度が変わり、特級・1級・2級という分別が無くなり、
今は「吟醸酒」「純米酒」「普通酒」などと表わす様になりました。
その事を私は、とても喜んでいます。
なぜかというと、とにかく「わかりやすい」から。
大切な事ですよね。
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日本酒の分別
日本酒のラベルには、色々な事が書かれています。最も大きな字が、その酒の名前と すぐ解りますが、 その他に 「純米吟醸 山廃造り 生酒 山田錦使用」 などと書いてあったりします。 その意味を、よくお客さんに尋ねられるので、ここにまとめてみようと思います。
原材料 |
精米歩合 |
醸造方法 |
処理方法 |
使用酒米 |
純米 |
吟醸 |
山廃造り |
生酒 |
山田錦使用 |
〇原材料・・・・・・「醸造用アルコール」 を使用しているか否か。
〇精米歩合・・・・酒米をどれほど磨いて造っているか。
(米粒の表面には酒造りに適さない成分があり、たくさん削るほど優れた酒が出来る)
〇醸造方法・・・・いくつもある仕込み方のどれなのか。
〇処理方法・・・・瓶などに詰めるまでの加熱方法。
原材料と精米歩合による分類
原 材 料 |
精 米 歩 合 |
60% |
45~50% |
35~45% |
米・米麹・醸造用アルコール |
本醸造酒 |
吟醸酒 |
大吟醸酒 |
米・米麹 |
純米酒 |
純米吟醸酒 |
純米大吟醸酒 |
醸造方法による分類
〇 生もと造り 〇 山廃造り 〇 袋しぼり 〇 ひやおろし 〇 四段掛け 〇 生一本造り 〇 あらばしり 〇 三段仕込み ・・・などなど
処理方法による分類
醸造された酒を、「貯蔵前」 と 「瓶詰めを行う前」 に、「火入れ」 をするのが通常の出荷状態。 (火入れ=「殺菌」 ・「品質劣化を防ぐ」 という目的で酒を 60℃位に加熱する事) 〇生酒・・・・・・・・火入れを一切せずに仕込まれた酒 〇生貯蔵酒・・・・貯蔵前には火入れをせず、瓶詰め前に火入れされた酒 〇生詰め・・・・・・貯蔵前に火入れをして、瓶詰め前には火入れをしない酒
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―――酒蔵の方達の努力で「いい酒」が造られ、品質を落とさぬ様に運搬・管理
された「すぐれた酒」。
しかし、デリケートに味が変化する、この飲み物。
だからこそ「良い状態」のときに味わいたいものです。 |
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【 デリケートに変化する味 =「熟成」】
たとえば魚でしたら、海で採れた時が最も良く、あとは不味くなる一方でしょう。 ところが日本酒は違います。 「麹(こうじ)は生きている」 とよく言われるように、日本酒は熟成し続けます。 もちろん蔵元も、熟成させて旨くなった時に出荷するのでしょうけれど、麹はまだ死にません。 皆さんが酒を購入し、栓を開けた後も まだ熟成しています。
味が良くなってゆく方向が熟成であり、 飲み頃の状態を過ぎ、不味く変化するのは 「劣化」 でしょう。 私の店において、酒が劣化するまでに消費出来るのは、15本位が限度だと感じています。
保存状態の違いによる 熟成の変化
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保存場所 |
味 |
香 り |
旨味 |
甘味 |
酸味 |
苦み |
爽やかさ |
ふくよかさ |
冷蔵庫 (5℃) |
一定 |
少増 |
一定 |
一定 |
一定 |
少増 |
涼しい所 (12℃) |
少増 |
増 |
少増 |
一定 |
少減 |
増 |
常温 (20℃) |
増 |
増 |
多増 |
少増 |
多減 |
少減 |
注 : あくまでも一例であって、保存期間や酒の種類 ・ 製造方法などによって大幅に違ってきます
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味わう
日本酒の味を評価するときに、よく 「甘口」「辛口」の2種類に分けら
れたりします。 まるでスーパーにある「お好み焼きソース」の様に。
でも本当は、実にさまざまな味の複合体であり、
「いかに言葉で表現するか」ということを、
日本酒の楽しみのひとつにしている方もいる位です。
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味をよく理解するための観点として
色・香り・温度・口当たり・舌触り・鼻へぬける香り・甘み・酸味・苦み・
辛み・旨み・ 喉越し・あと味・余韻・全体のバランス・・・ などなど。
誰もが独自に感じ取ることの出来る、この複雑極まりない飲み物。
なんと不思議な事でしょう。 |
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【 利き酒(ききざけ)・ 酒を味わう】
利酒なんていうとたいそうに聞こえます。 ハンバーグを楽しむように、酒も?いてみましょう!
■視覚 による利き酒
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状態 |
表現方法の例 |
色調 |
色の種類 明るさ 濃淡 |
青みがかった 水晶 琥珀 茶・こげ茶 |
粘性 |
アルコール度数 糖度 |
さらり みずみずしい とろり ねっとり |
透明度 |
輝き にごり くもり |
高い透明度 不透明 |
■嗅覚 による利き酒
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表現方法の例 |
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口に含む前 |
穀物の香り 鉱物系 |
含んですぐ |
花の香り 果実系の 香草のような |
喉越しあと |
木の実の 無香 |
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■味覚 による利き酒
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場 所 |
特 徴 |
表現方法の例 |
舌の前部 |
甘味 粘性 まろやかさ 発泡 |
さらりとした甘味 |
舌の後部 |
酸味 旨味 ふくらみ 苦み |
優しい酸味 軟らかな旨味 |
舌の全体 |
濃淡 バランス |
軽やかな味わい ボリューム感のある |
舌から喉にかけ |
苦み 余韻
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さらりとした苦み
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口腔 |
きめ細やかさ 渋味 |
かすかな渋味 |
上顎 |
ざらつき 粘性 なめらかさ |
ねっとりと ざらざらした 粘りつく |
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日本酒を飲むための「良い状態」
まずは、その一本が「飲みごろ」である事。
そしてその「温度」。
「肴(さかな)」。
「雰囲気」。
もうこれだけ揃えば、肝臓もグッタリ。
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【 日本酒を味わうための 良い状態 】
「飲みごろ」の一本がある 酒の温度 肴(さかな) 雰囲気 ---これだけ揃えば もう バッチリ。 |
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「飲みごろ」の一本 上記【デリケートに変化する味=「熟成」】参照
ある一本の酒の封を切り、まずは テイスティング。 「ふむふむ、こういう味か。」 明くる日、その酒をまたまた テイスティング。 するとすでに味に変化が起きている。 こういった事は しばしばあります。
また 封切り時、苦み・酸味・甘味がはっきりしていた一本が、10日後には 角が取れて マイルドになっていたりもします。 変化する味に対して、飲み手がどの味を好むか という事が 「飲みごろ」 だと思います。
酒の温度
「地酒は、冷やで飲むものだ。」 とおっしゃる方がいます。 たしかに吟醸酒などは、せっかくの香りが 燗をする事によって壊れる事が多い様です。 しかし、なかには 「ぬる燗」をする事によって、欠点を隠して旨くなる酒もあります。 また 燗の温度だけではなく、冷やでも 「5℃」 と 「10℃」 とでは 違った酒に感じる事が多々あります。
燗 酒
日向燗 |
ひなたかん |
30℃位 |
人肌燗 |
ひとはだかん |
35℃位 |
ぬる燗 |
ぬるかん |
40℃位 |
上燗 |
じょうかん |
45℃位 |
あつ燗 |
あつかん |
50℃位 |
飛びきり燗 |
とびきりかん |
55℃位 |
冷 酒
雪冷え |
ゆきひえ |
5℃位 |
花冷え |
はなひえ |
10℃位 |
涼冷え |
すずひえ |
15℃位 |
肴(さかな)
相乗効果という現象があります。 意味は、異なるものが合わさる事によって 大きな効果を生む、とか なんとか。
酒と肴の相性は、全ての人が経験によって ある程度は感じていると思います。 私の場合、「魚のみりん干し」 と ビールとは 一緒に口に出来ません。 口中が生臭く なって仕方ありません。 お好み焼きを食べる時は、どーーしても ビールが欲しい。
こういった「相性・調和」 というものって、なぜか楽しく感じます。 お気に入りの吟醸酒が、肴を呼んでいるならば これは大変。 肴にもそれ相応の味を 求めてしまいますから。 ですが、うまく調和した時は・・・・・・。
雰囲気
人は色んな時に、アルコールを口にします。 嬉しい時、悲しい時、何かをやりとげた時、つらい時、好きな友と会った時・・・・・・。 私も酒の力には、色々とお世話になってきました。
日本酒を味わう・・・。 心身共に健康で、気のあう仲間と、明るく、飲みたいですね。
酒の持つ最大の長所、そして最大の欠点。 それは、「酔ってしまう事!」
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「地酒ブーム」から久しく、現在多くの蔵元から優れた日本酒が
醸(かも)し出されています。
今こうして、味にこだわる事ができるこの尊さ。
とても感謝しています。
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