■ 温度の問題意識が必須 ■
web name : 徳次郎
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 【 締める 】
温度の話 
無いなら無いなりに 
氷水の温度  
すべての基本、水  

 温度の話

以前お邪魔した、お蕎麦屋さんでの体験です。

こちらは、自家製粉で、
純国産粉の手打ち蕎麦を出してくれる、
こだわりのお店です。

ここのご主人の考え方だと思いますが、
一つ、頭をかしげた事がありました。

茹でた後の蕎麦を、
冷水で締めておられませんでした。

ひょっとしたら、
「冷えた蕎麦は風味に欠ける」 と
お考えかもしれません。

わたしも、そうだと思います。
必要以上に冷やされた蕎麦は、
味も香りも激減します。

では、「必要な冷やし」 って何?

私が思うには、
蕎麦の食感が「キリッ!」 とする温度に
してあげるってこと。

季節によっても、変わりますね。

夏は、冷たいものを美味しく感じるので、
蕎麦の風味よりも、食感を重視して、
「チョット冷え過ぎかな?」 っていう
くらいにします。

冬でしたら、
水道水そのものが冷た過ぎるので、
お湯を足して、冷やし水の温度を少し上げます。

せっかく、丁寧に打った蕎麦です。
最後の仕上げ、温度への気配りは、大切ですね。





 無いなら無いなりに

とある お蕎麦屋さんの話です。

そのお店は、
手打ち蕎麦を作るための設備が、完璧に整っています。

直径1mは 有ろうかと思われる大きな茹で鍋。
その大量の水を 沸騰させる力を持った強力ガスコンロ。

その大きな鍋から、一回で蕎麦をすくい上げる事が出来る、
「手付きのざる」が、これまた馬鹿でかい。

そして、巨大なざると、巨大なボールを使って流水にさらします。
また、その水道の蛇口が太く、かなりの水量を扱えます。

そして、私が最も感心したのが、「締め」のための設備です。

この店には、大きな製氷機が有り、
おもむろに大きなスコップですくい取られる、
小さな粒のキューブアイス。

いいなぁ。
こんな小さな氷を、あんなにいっぱい使ったら、
蕎麦の熱を一気に奪えるでしょうね。

私の店には、こんな設備は有りません。
冬なら、水道水が冷たいので問題は無いのですが、
夏場は苦労します。

夏の水道の温かい水を、
蕎麦を締めることが出来る温度に下げるには、
かなりの時間が必要です。

ですから締めのための水は、2つのボールで
前もって氷で冷やしておきます。

ひとつは 「粗熱取り用」、もうひとつは 「仕上げ用」 。
茹であがり直後に水道水で冷やしますから、
締めの作業は、3段構えになります。

蕎麦を瞬時に締めるための、
設備無き当店の苦肉のテクニックです。






 氷水の温度

茹で上げた蕎麦を冷水で締める事の
重要性は前述通りです。

その冷水の話です。

盛夏のこの時期は、多大な量の氷が必要になります。
昨日の当店の水道水の温度は、28.5度でした。

その高温の水を、冷水に変えるまでに掛る時間は、
蕎麦を茹でる時間よりも、はるかに永いものです。

あらかじめ、冷水を作っておくことは、必然ですね。

ちなみに、氷水の温度は、意外と下がりません。
蕎麦を締めるための、ボールの中の氷水の温度は
長時間掛けても、6度位までしか冷たくなりません。

では、6度の冷水で蕎麦を締めるのが良いのでしょうか?

この温度では、蕎麦の風味が掻き消され、
さらに、その冷たさに不快感を感じます。

冷た過ぎる蕎麦は、旨くありません。

私が感じる、旨い蕎麦へのアプローチは、
「夏なら8度、冬なら10度」と、思っています。

皆さんも、ざる蕎麦を食べる時に、
蕎麦の温度に意識を向けてみてください。

味と温度には、大きな関係が有ることを感じられる事と思います。
それもまた、楽しいことです。







 すべての基本、水

当店がテナントとして入っているビルには、
最上階に大家さんがお住まいです。

??? それが何か?

大切なのです。
性悪説にとって考えてるわけではありませんが、重要な事です。

それは、当店の水道から出る「水」が美味しいからです。

美味しい水が、普通に水道から出るというには、2つの条件が要ります。
1、その地域の水源と水質の良さ
2、ビルの貯水タンクや水道管の洗浄と管理

というわけで、
大家さんも同じ水を生活用水として使うという環境は、ありがたい事です。

それは、なぜか?
蕎麦を提供するには、水の美味しさは必要不可欠だからです。

ここで、先日の体験談。

某手打ち蕎麦屋さんで、いつものようにざる蕎麦を頂きました。
丁寧なお仕事ぶりが見てとれるお蕎麦さんでした。

でも、ざる蕎麦をコーティングしている水が美味しくない。
茹であげた蕎麦を締める為の「氷水」が美味しくないのでしょう。

水道水が悪いのか、使った氷が悪いのかは、わかりません。

こちらのお店も、ビルのテナントとして入っておられます。
同じフロアーに、自動車の整備工場が有ります。
もしかしたら、飲食店に必要な環境が整っていないのかもしれない。

こんな酔狂な話も・・・
繁華街で繁盛していたお蕎麦屋さんが、
いい水を求めて、郊外の山里に移転しました。

蕎麦にこだわるということは、
とても壮大なことのようです。






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