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web name : 徳次郎
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 【 食文化 】
関西のそば事情 その1
関西のそば事情 その2
関西のそば事情 その3
硬水と軟水
習慣と嗜好 
お相手募集中
旬の意味 その1
旬の意味 その2
旬の意味 その3

 関西のそば事情 その1

「 所変われば 品変わる 」
自分の体験として、充分理解しています。

さらに、
「 郷に入れば 郷に従え 」
賢明な生き方・考え方だと思います。

でも、
・・・ しかし ・・・ 、
納得しにくい事も有るもので ・・・

私は、阪神地方で生まれ育ち、
京都・東京・名古屋、と移り住んで、
現在、宝塚市に住まわせて頂いています。

蕎麦に、こだわれば こだわるほど、
蕎麦つゆの 「好みの味」 に疑問を感じます。

出汁の取り方ではなく、「濃度」 のことです。

関西で、ざる蕎麦を注文すると、
つゆがそば猪口に、たっぷり入って出てきます。
7分目くらいでしょうか。

そして、それは、
そのまま飲むことが出来るほどの薄い濃度です。

関西人の多くは、こうです。↓

蕎麦を箸でつまみ上げ、そば猪口に持っていき、
・・・ 入れてしまうのです。

一旦、箸は離れます。

さらに、底に着いた蕎麦を箸でつまみ、
半回転させて、万遍なく 「つゆ」 を絡ませてから
口に運びます。

まるで、蕎麦の 「つゆフォンデュ」 ですね。 

そして、面白いことに、
このようにして食べる人が、「ズズッ」 と音立てて・・・


土地それぞれの食文化であり、
永い習慣を逸脱しない地域の特性。

食べ方を否定は致しませんが、
蕎麦に関して関西は、発展途上ですね。

                             つづく




 関西のそば事情 その2 

東京に行くと、驚くのが 「蕎麦屋さん」 の多さです。

食堂に蕎麦が有る、というのではなく、
蕎麦の専門店がです。

関西では、都心部に少し有るくらいで、
「蕎麦屋」 の看板を上げていても、
うどんも扱っていて、
そして、そのうどんの評判が良かったりします。

これは私見ですが、
今なお 「本物の蕎麦」 は、
関西では理解されていません。

理解というより、それを求める人が希少です。
「お好み焼き屋」 なら、素晴らしく多いのですが・・・

駅の構内の 「立ち食いそば屋」 にある 「ざる蕎麦」 が、
多くの関西人にとっての 「そば」 です。

そして、「生のうずら卵」 です。
20年程前までは、必ず付いてきました。

「田舎臭さ」 に気付いたのでしょうか?
現在は、うずら卵を出す店は、ほとんどありません。
でも、この手の蕎麦なら、
むしろ有った方がいいと、私は思うのですが・・・。

                              つづく




 関西のそば事情 その3

で、そんな関西ですが、
現在では、「本物の麺」 に仕上げるお店が
増えてきました。

美味しい蕎麦への、ニーズが高まったのでしょう。

しかし、そのようなお店でも、
蕎麦つゆは、弱く多量に出されます。

東京で進化した 「そば文化」 のような理解は、
まだまだ望めないのかなぁ。

この情報社会になっても、
各地で 「方言」 が愛されていることを考えると、
永き習慣は、捨てない方がいいのかなぁ?

そうは言いつつも、
私は、私の思う 「旨い蕎麦」 を目指して行きたいと思う。

頑張らねばっ!




 硬水と軟水

欧米で供給される水は、「硬水」 のようです。
なので、当然のように 飲料水を購入します。
ドイツでは、「ビールよりも水の方が高価」 らしいですね。

硬水は、飲料水や料理には、不向きです。

日本の食文化が、これほどの繊細さを持てたのは、
この国のほとんどの土地が、「軟水」 であるおかげかも。

しかし、ごく一部だけ 「硬水」 を、
生活水として使う地域が有ります。
「東京周辺」 と 「沖縄」 です。

板前修業中に私は、京都から東京に移り住みましたが、
「東京の水には、苦労しました」。

出汁が上手く取れないのです。
鰹節からも、昆布からも、旨味成分が出にくいのです。

あと、お茶やコーヒーなども、硬水では駄目でした。

東京の 「水」 事情が、旨味を引き出しにくい為に、
発展したのが、「蕎麦文化」 だと思います。


これは余談になりますが・・・

私が感じるに、
「喰い道楽」 の大阪よりも、
東京の方が 美味しいものがいくつか有ります。

とんかつ・寿司・うなぎ・ラーメン ・・・
これらはみんな、「水」 の良し悪しとは縁遠いものです。

対して、西の食文化で優れているものといえば、
豆腐・湯葉・そうめん・・・
水が決め手です。

あと、鍋物にしても、味噌味は少なく
「昆布出汁でポン酢」 を好みます。

アンコウ鍋も、ポン酢で食べます。


これほど違う 「水」 事情。
軟水で蕎麦を極めれば、もっともっと向上するはず。





 習慣と嗜好

訳あって今、鹿児島に来ています。

道中、食事といえば 「蕎麦」 ばかり。
飽きることなく蕎麦を喰う。

好きという事も有りますが、
長距離の移動という体調には、
蕎麦は、とても良い!

「ところ変われば品変わる」
それを実感しながら、頂いています。

例えば、蕎麦つゆの醤油。

鹿児島の醤油は、独特の匂いが有り、
味も甘くて、私は苦手です。

でも、地の人々には、これが親しんだ味で、
「キッコーマン」 や 「ヤマサ」 は、辛いようです。

このこと1つをとってみても、
到底、無理なことかな、
「すべての人に旨いと言わせる」って。

蕎麦そのものも、かなり 「雰囲気」 が違います。
どう表現すれば良いのでしょうか?

「都会的」 か 「郷土色あり」か。
こんな分け方では、説得力が無い?

しかし、いつも感じる事なんです。
何なんでしょうか、この感じ。

その土地土地の人々が、
「蕎麦の美味しさ」 に対して、
何か根本的なところで、理解と要求が
違うんじゃないか?

あれま、?
向かう場所があったはず。
今、道に迷っている?





 お相手募集中

何か、欲しい。
蕎麦の相手に、何かしら欲しい。

朝・昼・夜、いつ 「手打ち蕎麦」 を召し上がりますか?

現実として、朝に 「こだわりの蕎麦」 を頂くことはないでしょう。
このようなお蕎麦屋さんは、朝は営業していませんから。

昼か夜、ということになります。
( お蕎麦屋さんは、夜の営業も 閉店が早いものです )

夜に 「こだわり蕎麦」 は、いいもんですね。
料理と酒のあと、最後に蕎麦で締める、とか
2件目にお蕎麦屋さんに寄って、美味しく 「ざる蕎麦」 を頂く。
嬉しいものです。

問題は、昼です。
大抵のお蕎麦屋さんには、たくさんのメニューがあります。

しかしその店が、こだわっていれば こだわっているほど、
蕎麦が 美味しければ美味しいほど、「ざる蕎麦」 しか注文出来ない。

天婦羅も丼も、蕎麦の味を損なうように想います。
主役の座を奪われるような感じ。

かといって、ざる蕎麦を2人前、というのも・・・

私の店では昼に、「ざる蕎麦」 と 「彩りご飯」 をセットで提供しています。
ご飯は日替わりで、薄味の炊き込みご飯を用意しています。

でもこれが、最上と思っているわけではありません。
むしろ、大阪独特の 「お好み焼き定食」 の雰囲気すら感じています。

何か無いだろうか?
蕎麦の味を引き立てて、それでいて 「お昼の食事」 として満足のいく品。
何か、欲しい ・・・





 旬の意味 その1

こだわりや、努力だけでは、到底及ばない部分があります。

「夏の蕎麦」は、美味しくない。

――――― ※ ―――――

割烹という料理形式は、素材そのものが持っている旨みを引き出します。
言い換えれば、不良食材を使っては、割烹料理は成立しないということです。

例えば、鯛(たい)の刺身を造るとします。
天然ものと、養殖ものでは、同じ魚とは思えないくらいに、味に違いがあります。

無理やりに、蕎麦に例えると、
天然鯛は手打ちそば、養殖鯛は乾麺といったところでしょうか。

最高の天然鯛が手に入り、刺身にするならば、細工はしない方が美味しいでしょう。
この場合の細工というのは、
皮霜造りや、焼き霜造り、卸しポン酢和え、などの事です。

一口に天然の鯛といっても、一匹一匹の持つ旨さの実力は、
それぞれに大きく違っています。
生息地・漁場・大きさ・締め方・輸送段階での管理方法・当たりはずれ・・・

このように色々な要因で、「天然の鯛」というブランドも、「名」だけの残念な、
「これ、美味しくない〜。」という結果になることも・・・

しかし、最も大切な要因は、先ほど挙げた条件の中には有りません。

素材の長所を表現するための、最も大切な要因は、「旬」です。

                             つづく





 旬の意味 その2

真鯛(まだい)のブランド的な存在といえば、
明石鯛(兵庫県明石海峡)かもしれません。

ではその鯛ならば、一年中美味しいのかというと、そうではありません。

桜鯛と呼ばれる脂の乗った産卵期を終えた後の、
6月頃の鯛は、痩せ細り、脂も抜けて美味しくありません。
ちなみに、この頃の天然鯛は、市場価格でも、養殖鯛を下回ることが多々あります。

この季節の美味しくない鯛を使って調理するには、手間と工夫が必要になります。

ここから、蕎麦の話になります。

蕎麦の旬はというと、秋。
新蕎麦の出る秋が旬です。

私は、「手打ち蕎麦」は、割烹料理そのものと捉えています。
良い素材に余計な物は加えず、シンプルに蕎麦の旨味を楽しむもの。

ところが、夏の蕎麦には、それが出来ないという現実があります。

蕎麦本来の香りは抜け、旨味も弱く、蕎麦出汁の旨さに頼るしかない。
そのわりに、食欲の無い暑い夏に、
冷たくさっぱりとした「ざる蕎麦」が重宝されているという現実。

蕎麦にこだわれば、この理不尽さに、頭打ちになってしまいませんか?

                               つづく





 旬の意味 その3

数年前の夏のことです。

路線から遠く離れた場所に一軒家で営業している手打ち蕎麦屋さんで、
「二八蕎麦」と「十割蕎麦」の両方を頂きました。

結果から言うと、十割蕎麦は全く味も香りも無く食感も良くありません。
玄そばを混ぜた少々黒っぽい二八蕎麦の方が、上でした。

旬を外れた夏に、十割蕎麦を打つ意味があるのでしょうか?

このお店での体験を元に、私はこう考えています。

※『蕎麦粉の不味い夏を乗り切る手打ち蕎麦』※
「玄そば2+丸抜き8」 + 小麦粉2割

この割合で粉合わせをし、
いつものようにまで、細く打たず、
茹で加減を極力 短めにします。

解る方には、解ると思いますが、「誤魔化しの蕎麦」です。
風味・香りが無い季節の蕎麦を、野趣味のある蕎麦に仕立て上げるための
「ズルい方法」かもしれません。

ですが、この季節に「十割蕎麦」で真っ向勝負する気にはなれません。
それほど、夏という季節は、蕎麦好きな人にはつらい季節ですね。

秋の新そばの収穫が待ち遠しい、我ら蕎麦人です。







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