■ DVD 『ゼロからの手打ち蕎麦』 ■
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熱い蕎麦も、これなら・・・
こんな荒技が。 
熱い蕎麦を考える
漫画からも知る 
熱い蕎麦を考える 2
蕎麦の定義って何?

蕎麦と日本酒は、合わない (1
蕎麦と日本酒は、合わない (2)
蕎麦と日本酒は、合わない (3)
蕎麦と日本酒は、合わない (4)
蕎麦と日本酒は、合わない (5)
蕎麦と日本酒は、合わない (6)
蕎麦と日本酒は、合わない (7)
蕎麦と日本酒は、合わない (8)
蕎麦と日本酒は、合わない (9)
 熱い蕎麦も、これなら・・・

喫茶店で出される 「ホットコーヒー」 は、
熱々にかぎります。

「ぬるい」 と感じると、美味しくないし、不快です。

で、その熱々コーヒーと、一緒に運ばれてくるのが、
冷たい ミルク (フレッシュ)。

そこは、気にしないのかな?
ミルクも温めてくれればいいのに。
私は、ブラックで頂くから、当事者ではないですが・・・


これと、同じように思うことがあります。
「ざる蕎麦」 と 「熱いつゆ」 。

一口目は、いいとして。
つゆが、どんどん冷めてゆき、
食べ終わりに向けての、テンションの下がり方は、
すさまじいものです。



先日、某外食チェーンで頂いた演出には、感心しました。
( 文章で説明するのは 難しいかな? )

土鍋に出汁をはり、コンロで出されます。
出汁の濃さは、かけ汁 と つけ汁 の中間くらい。

その熱い出汁を、そば猪口に少しとります。

別盛りで出ている、ざる蕎麦を少量取り、鍋で温めます。
すぐに取って猪口で頂きます。

「蕎麦のしゃぶしゃぶ」 といったところでしょうか?

熱い蕎麦が、「最後まで嬉しい」 という憎い演出。





こんな荒技が。 

期待して入ったお店では、ありませんでした。
駅ビル地下にある蕎麦屋さんです。

「そば湯」 も頂けない店です。

レジカウンターには、印刷文字で
「千円札が不足しています」 という紙が、
張り付けてられている店です。
( 時々見かけますが、変ですね )

商品は、当然のように、
香りの無い蕎麦が出てきました。

となりで、赤ん坊が泣きわめいています。

しかし、このお店、
ここからが 「いい話」 です。

天婦羅付き ざる蕎麦が、セットされた盆に
見慣れないものが、乗っています。

小さな すり鉢です。
その中には、挽く前の 「蕎麦の実」 が、20粒ほど。

自分で摺って、蕎麦に振り掛けて食べるようです。

     

これが、なかなか面白い。
香りの無い蕎麦に、風味が生まれます。
驚きました。

それに、結果的に粗い舌触りになるため、
それが、なんとも 「いい具合」 です。

この工夫に、頭が下がりました。

「芸能人格付け」 のテレビ番組で、試して欲しいな。
目隠しして、一口だけなら、
「こだわりの蕎麦」 と分別のつかない方もいるかも。






熱い蕎麦を考える

先日、手打ち蕎麦屋さんで、「熱い蕎麦」を頂きました。

これは、いつも感じることなのですが、「最後がつらい」。
食べ始めは、シャキッと歯ごたえ良くて嬉しいのですが、
2分も経ったら、伸びてだらしなくなる。

それが 「十割蕎麦」 だったりすると、もうグダグダです。
私には、これがどうにも頂けない。
せっかくの手打ち蕎麦を熱くして食べる必要があるのかな?


と、ここまで述べてから言うのもなんなのですが、
あのグダグダの状態の蕎麦から染み出た旨味は捨てがたく、
それを、「蕎麦」と捉えるとツライですが、
和食版 「スープパスタ」 と考えると、美味しい。


現在の日本に、熱い蕎麦が消滅していない現実と、
求められているという事実を考えると、
蕎麦は、「ざるに限る」というのは、乱暴なのかもしれない。
最近、そんなことを感じました。


伸びるという欠点と、熱いという喜びの、
この矛盾する2つを解きましょう。

ヒントは、今年の冬に頂いたファミレスでの一品。
   「熱い蕎麦も、これなら・・・」 参照


只今、新メニュー考案中!





漫画からも 知る

ネットで話題になっている漫画本が気になって、
5冊まとめて買ってきました。

コミック 「そばもん」 1〜5巻
「美味しんぼ」の蕎麦編といった感じです。

蕎麦に関しての、専門的な知識や考え方が、
物語の中に織り込まれていて、勉強になります。

参考にしたいと思います。
というのも、
結局のところ、「自分がどう感じるかが すべて」、ですから。

劇中に登場する主人公は、蕎麦を知り尽くしています。
他を圧倒する域に達しています。

それを見て思ったことが有ります。

旨いざる蕎麦を理解している人は、
日本人の中に、何%いるのだろうか?

そして私は、理解している方に入っているのだろうか。






熱い蕎麦を考える 2

当店の新メニュー、「蕎麦しゃぶ」 が完成しました。



国産の合鴨を使って、出汁に旨味を足します。
その名の通りの、細い細い白髪ネギ。
青みにクレソンを、あしらって出来上がり!

「旨い蕎麦は、ざるに限る」 は、私の信条ですが、
これなら、いける。

熱い蕎麦が持つ旨味を、ダイナミックに表現。
よし、いける。







蕎麦の定義って何?

駅ビルのグルメ名店街なるところの蕎麦屋さんに行きました。

「牡蠣(かき)あんかけ玉子とじ蕎麦」、を注文。

なんとなく想像は、していました。
無茶なメニューだな、と。

そして、想像通りのお味でした。

アツアツのあんかけの蕎麦が最後まで、延びない!
ある意味、調理場内の作り手としては、
適正な蕎麦を選んでいるということですね。

ただ、この商品を「蕎麦」という枠組みに入れていいのだろうか?





蕎麦と日本酒は、合わない (1)

以前から不思議に思っていました、
「蕎麦と日本酒は、よく合う。」という意見に。

まずもって、ハッキリさせておくべきは、「そば前」という言葉の存在。
蕎麦を頂く前に呑むお酒のこと。
そのために蕎麦屋さんには、酒の肴がある。

この言葉の表す通りで、何の不思議もありません。
お酒をちょっとした肴で楽しんで、しめに蕎麦を食べて帰る。
日本人でよかったなぁ〜、と感じる瞬間です。

では、「蕎麦と日本酒は、よく合う。」が、なぜ多数派なのでしょうか?

じっくりと考えてみたいと思います。

                          つづく





蕎麦と日本酒は、合わない (2)

そもそも「合う」って、どういうことを指すのでしょうか?

私が思うには、相乗効果をもたらす物どうしが
くっついた状態ではないでしょうか。

有名なところでは、鰹節と昆布の出汁です。
鰹節の旨味「1」と、昆布の旨味「1」を、たすと 「5」 になるような。

ですから、1+1=2 の食べ物どうしは、
「合う」という大袈裟な表現には至らないように感じます。

私は、ブルーチーズが好きです。
それも、カビの効いた(こんな表現は変?)強い味のブルーチーズです。
そして、それに合うワインを選んでもらいます、バーテンダーさんに。

この強いチーズに、淡白なワインは、合わせにくいのでしょうか、
いつも濃厚なワインを選んでくれます。

私がブルーチーズが好きなのは、大前提として 「合うワイン」が有るからです。
ブルーチーズだけを食べるということは有り得ません。

言い換えると、ブルーチーズと、それに「合うワイン」の
相乗効果の旨味が好きなのかもしれません。

日本料理の世界に、「出会いもの」というのが有ります。
意味は、同じ季節に旬を迎える相性の良い食材どうしの合わせ調理。

「筍と若布」・「ハモと松茸」・「鯛とカブラ」・「ブリと大根」・・・

相手を引き立てあう物どうし、
という意味に於いては、間違いなく「合う」のでしょう。


                              つづく





蕎麦と日本酒は、合わない (3)

食べ物の相性の話です。
蕎麦と日本酒が合うか、合わないのかの話です。

その前に・・・、
寿司と日本酒は、合わないですね。

「蕎麦と日本酒が合う派」 の人からの
「何を言ってるんだ!」 という声が聞こえてきそうです。

では、行きます。

例えば、江戸前にぎりの「イカ」と日本酒を食べます。
確かに日本酒は、イカの旨みを引き上げ、生臭味を抑える。
イカは、日本酒の持つ奥深い旨みを、さらに複雑にして楽しいものです。
では、「シャリ」 って要る?

そうなんです。
シャリ(酢飯)が邪魔なんです。
イカと日本酒が合うわけで、イカの握りと日本酒が合うわけではない。

もう少し、気持ちの悪い話をしますと、
シャリと日本酒を両方味わって楽しめるならば、
いなり寿司や、巻寿司でも日本酒が合うという感性になります。

別にいいのです、食べても。
ただ、「合う」か「合わないか」のテーマの場合、
私は板前だから、曖昧にしてすむ事柄ではないように思いまして・・・

                        つづく





蕎麦と日本酒は、合わない (4)

では、「合わない」 という組み合わせには、どんなものがあるでしょうか。

これには個人差や経験値といったものが、大きく影響されると思います。
私個人的に申し上げますと・・・

○味醂干しの魚と 赤だし
○数の子と ビール
○生牡蠣と 赤ワイン
○キィウィと コーヒー
・・・などなど

これらは、1+1が 「−5」 になっているように感じます。
あと、「カレーとビール」 もイメージ的には合いそうですが合わないですね。
「1+1=0」 といったところでしょうか?

そのほか、習慣付いていて見落としがちになるものもあります。

○トーストと コーヒー
○酢豚と 炒飯
○牛乳全般

「1+1」 の結果が、「1以下」 ならば、合わないということではないでしょうか?

                                    つづく






蕎麦と日本酒は、合わない (5)

私自身は、日本酒が好きです。

ただ、前述の赤ワインと同様に、日本酒だけを呑むことはありません。
その酒に合う肴と共に頂き、味の膨らみを楽しみます。

余談ですが、純米大吟醸という製法で仕上がった日本酒は、
ある意味、肴を必要としないほど完成された酒だと思います。
ですから、良い肴が有った場合に、
純米大吟醸は、「出る幕」が無いように思います。
むしろ、ブランデーと同じように「食後酒」の位置にあるのではないでしょうか。

そんな訳で、私は「純米酒」か、「純米吟醸酒」を求めます。

そして、これらの酒が素晴らしいのは、
「肴に合わせられない日本酒は無い」ということです。
世界中のどんな肴にも、必ず「合う」日本酒が有ると思います。

たとえば、チーズを頂く場合、ワインよりも日本酒が合うのかと言われると、
そうではありません。
ですが、下手なワイン選びをするくらいなら、
日本酒の中にはそのチーズに合うものがあるはず。

具体的に言うと、和歌山の「羅生門」という日本酒は、
肴の概念を突き崩すような味を主張します。
ハンバーグでも合うような。

それほどまでに日本酒は、幅広い受け皿を持っています。

では何故、「蕎麦と日本酒は合わない」 と言うのだ?

                              つづく







蕎麦と日本酒は、合わない (6)

なんだそりゃ? という話になるかも・・・

食べ物の相性に、「合う」・「合わない」というテーマでした。
これまでに、いくつかの例をあげてみました。

そこで初めて気付いた事なのですが、
「合う」・「合わない」という概念は、
「個体」と「液体」を、口に含む事に対して生まれるのですね。

ビスケットと、ポテトチップス。
秋刀魚の塩焼きと、鶏のから揚げ。
もう論外ですね。

「個体」と「液体」を、もう少し柔らかく言うと、
「乾いたもの」と「水分量の多いもの」でしょうか?

秋刀魚の塩焼きと、冷奴。
「合う」とまではいかなくとも、無理ではないです。

さて、本題の蕎麦です。
蕎麦に合う、液体はなんでしょうか?

ソバも穀物の一種です。
そのソバの実を、日本の食文化が「蕎麦」に作り上げました。

蕎麦に最も合う液体、それは「蕎麦つゆ」です。

                             つづく






蕎麦と日本酒は、合わない (7)

蕎麦に合うのは、蕎麦つゆ!
って、当たり前ですね。

この国の先人が、永年かけて創意と工夫を積み重ねて
たどり着いた最高の調味料ですもの。
「蕎麦に合うように作ったつゆ」が、合わないわけがない。

最近 蕎麦を、「塩」で食べるようにと勧めるお店が増えてきました。

気持ちは解ります。
蕎麦本来の味を感じてもらおうとしての事ですね。

ですが、塩という調味料だけで、1人前の量の蕎麦を頂いて
満足できるでしょうか?

私は、無理です。

昨今は、「水そば」というものが注目を浴びています。
これも同じで、私は無理です。

なぜ、蕎麦本来の味は、シンプルに伝えられないのでしょうか?
それは、蕎麦そのものには、「旨み」が無いからです。

蕎麦に旨みが無いから、旨みの無い塩では、美味しく感じない。
蕎麦に旨みがないから、水で食べても、
食感や喉越しの良さを感じますが、美味しくはない。

そうすると、旨みは 「他から足す」 しかありません。
それが、蕎麦つゆです。

秋の「新米」は、それそのものに強い旨みが有ります。
おかずが無くても食べれる位の旨みです。
実際に、「塩のおむすび」ですらが、ご馳走になりますね。

                           つづく




蕎麦と日本酒は、合わない (8)

このテーマも、随分と長くなってしまいました。
蕎麦と日本酒が、合うか?合わないか?を述べてきました。

最初に戻りますが、相乗効果が最大の要素だと思います。

相乗効果 ―― 異なる2つがお互いを引き立て合う。

ですが、「蕎麦」は「蕎麦つゆ」と出会った時点で、
味は「完結」していると思います。
もう他には、何も必要としていない状態ではないでしょうか?

例えば「酒盗」(鰹の腹わたの塩辛)を食べるならば、
何としても日本酒が欲しいところでしょう。
「出会いもの」というものは、それくらい相手を惹きつけるように思います。

蕎麦は、特に旨い手打ち蕎麦は、それそのもので完成していると思います。
敢えて、アルコールの手助けは要らないものです。

では、日本酒の方は、どうでしょうか?
蕎麦が隠し持っている旨味を見つけ出し、引き上げる事が出来るでしょうか?

無理です。

蕎麦には穀物としての味は有りますが、肴の要素は持ち合わせていません。
だから、この国の食文化は、「蕎麦つゆ」に多大な旨味を加え、
作り出したのではないでしょうか?

「蕎麦つゆ」と日本酒が合うから、「蕎麦」と日本酒が合うと言いますか?
無理が有りますよね。

蕎麦は、もう充分 「幸せ」 なのでは ないでしょうか?
蕎麦を愛する人に対して、「旨い」を感じさせる喜びを、
与え切って居ると思いませんか?

                        つづく





蕎麦と日本酒は、合わない (9)

・・・というわけで、これまで私見を述べさせて頂きました。

蕎麦と日本酒は合うのでしょうか?

「蕎麦と日本酒は合う」という意見の方が
過半数を占めるようです。

「蕎麦と日本酒は合わない」と言い切る方も
少なからずおられます。

これは、関わり方の違いだと思います。
蕎麦との関わり方、日本酒との関わり方、味の相性への関心度など、
人それぞれの感じ方の個性ではないでしょうか?

また個人差というなら、もっと大きな要因が有ります。
生まれ育った環境や時代、性別、生きてきた年数、
アレルギー、味の好み・・・

そういった個人個人の感性を尊重しようと思います。

日々の生活の中で、味覚から得られる満足感を
素直に喜べたら幸せですね。

このテーマも(9)までになり、長文となってしまいました。
私見にお付合い下さいまして、ありがとうございました。






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