こんな荒技が。 |
期待して入ったお店では、ありませんでした。
駅ビル地下にある蕎麦屋さんです。
「そば湯」
も頂けない店です。
レジカウンターには、印刷文字で
「千円札が不足しています」 という紙が、
張り付けてられている店です。
(
時々見かけますが、変ですね
)
商品は、当然のように、
香りの無い蕎麦が出てきました。
となりで、赤ん坊が泣きわめいています。
しかし、このお店、
ここからが
「いい話」 です。
天婦羅付き ざる蕎麦が、セットされた盆に
見慣れないものが、乗っています。
小さな
すり鉢です。
その中には、挽く前の 「蕎麦の実」
が、20粒ほど。
自分で摺って、蕎麦に振り掛けて食べるようです。
これが、なかなか面白い。
香りの無い蕎麦に、風味が生まれます。
驚きました。
それに、結果的に粗い舌触りになるため、
それが、なんとも
「いい具合」 です。
この工夫に、頭が下がりました。
「芸能人格付け」
のテレビ番組で、試して欲しいな。
目隠しして、一口だけなら、
「こだわりの蕎麦」
と分別のつかない方もいるかも。
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熱い蕎麦を考える |
先日、手打ち蕎麦屋さんで、「熱い蕎麦」を頂きました。
これは、いつも感じることなのですが、「最後がつらい」。
食べ始めは、シャキッと歯ごたえ良くて嬉しいのですが、
2分も経ったら、伸びてだらしなくなる。
それが 「十割蕎麦」 だったりすると、もうグダグダです。
私には、これがどうにも頂けない。
せっかくの手打ち蕎麦を熱くして食べる必要があるのかな?
と、ここまで述べてから言うのもなんなのですが、
あのグダグダの状態の蕎麦から染み出た旨味は捨てがたく、
それを、「蕎麦」と捉えるとツライですが、
和食版 「スープパスタ」 と考えると、美味しい。
現在の日本に、熱い蕎麦が消滅していない現実と、
求められているという事実を考えると、
蕎麦は、「ざるに限る」というのは、乱暴なのかもしれない。
最近、そんなことを感じました。
伸びるという欠点と、熱いという喜びの、
この矛盾する2つを解きましょう。
ヒントは、今年の冬に頂いたファミレスでの一品。
「熱い蕎麦も、これなら・・・」 参照
只今、新メニュー考案中!
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漫画からも 知る |
ネットで話題になっている漫画本が気になって、
5冊まとめて買ってきました。
コミック 「そばもん」 1〜5巻
「美味しんぼ」の蕎麦編といった感じです。
蕎麦に関しての、専門的な知識や考え方が、
物語の中に織り込まれていて、勉強になります。
参考にしたいと思います。
というのも、
結局のところ、「自分がどう感じるかが すべて」、ですから。
劇中に登場する主人公は、蕎麦を知り尽くしています。
他を圧倒する域に達しています。
それを見て思ったことが有ります。
旨いざる蕎麦を理解している人は、
日本人の中に、何%いるのだろうか?
そして私は、理解している方に入っているのだろうか。
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熱い蕎麦を考える 2 |
当店の新メニュー、「蕎麦しゃぶ」 が完成しました。
国産の合鴨を使って、出汁に旨味を足します。
その名の通りの、細い細い白髪ネギ。
青みにクレソンを、あしらって出来上がり!
「旨い蕎麦は、ざるに限る」 は、私の信条ですが、
これなら、いける。
熱い蕎麦が持つ旨味を、ダイナミックに表現。
よし、いける。
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蕎麦の定義って何? |
駅ビルのグルメ名店街なるところの蕎麦屋さんに行きました。
「牡蠣(かき)あんかけ玉子とじ蕎麦」、を注文。
なんとなく想像は、していました。
無茶なメニューだな、と。
そして、想像通りのお味でした。
アツアツのあんかけの蕎麦が最後まで、延びない!
ある意味、調理場内の作り手としては、
適正な蕎麦を選んでいるということですね。
ただ、この商品を「蕎麦」という枠組みに入れていいのだろうか?
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蕎麦と日本酒は、合わない (1) |
以前から不思議に思っていました、
「蕎麦と日本酒は、よく合う。」という意見に。
まずもって、ハッキリさせておくべきは、「そば前」という言葉の存在。
蕎麦を頂く前に呑むお酒のこと。
そのために蕎麦屋さんには、酒の肴がある。
この言葉の表す通りで、何の不思議もありません。
お酒をちょっとした肴で楽しんで、しめに蕎麦を食べて帰る。
日本人でよかったなぁ〜、と感じる瞬間です。
では、「蕎麦と日本酒は、よく合う。」が、なぜ多数派なのでしょうか?
じっくりと考えてみたいと思います。
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (2) |
そもそも「合う」って、どういうことを指すのでしょうか?
私が思うには、相乗効果をもたらす物どうしが
くっついた状態ではないでしょうか。
有名なところでは、鰹節と昆布の出汁です。
鰹節の旨味「1」と、昆布の旨味「1」を、たすと 「5」 になるような。
ですから、1+1=2 の食べ物どうしは、
「合う」という大袈裟な表現には至らないように感じます。
私は、ブルーチーズが好きです。
それも、カビの効いた(こんな表現は変?)強い味のブルーチーズです。
そして、それに合うワインを選んでもらいます、バーテンダーさんに。
この強いチーズに、淡白なワインは、合わせにくいのでしょうか、
いつも濃厚なワインを選んでくれます。
私がブルーチーズが好きなのは、大前提として 「合うワイン」が有るからです。
ブルーチーズだけを食べるということは有り得ません。
言い換えると、ブルーチーズと、それに「合うワイン」の
相乗効果の旨味が好きなのかもしれません。
日本料理の世界に、「出会いもの」というのが有ります。
意味は、同じ季節に旬を迎える相性の良い食材どうしの合わせ調理。
「筍と若布」・「ハモと松茸」・「鯛とカブラ」・「ブリと大根」・・・
相手を引き立てあう物どうし、
という意味に於いては、間違いなく「合う」のでしょう。
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (3) |
食べ物の相性の話です。
蕎麦と日本酒が合うか、合わないのかの話です。
その前に・・・、
寿司と日本酒は、合わないですね。
「蕎麦と日本酒が合う派」 の人からの
「何を言ってるんだ!」 という声が聞こえてきそうです。
では、行きます。
例えば、江戸前にぎりの「イカ」と日本酒を食べます。
確かに日本酒は、イカの旨みを引き上げ、生臭味を抑える。
イカは、日本酒の持つ奥深い旨みを、さらに複雑にして楽しいものです。
では、「シャリ」 って要る?
そうなんです。
シャリ(酢飯)が邪魔なんです。
イカと日本酒が合うわけで、イカの握りと日本酒が合うわけではない。
もう少し、気持ちの悪い話をしますと、
シャリと日本酒を両方味わって楽しめるならば、
いなり寿司や、巻寿司でも日本酒が合うという感性になります。
別にいいのです、食べても。
ただ、「合う」か「合わないか」のテーマの場合、
私は板前だから、曖昧にしてすむ事柄ではないように思いまして・・・
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (4) |
では、「合わない」 という組み合わせには、どんなものがあるでしょうか。
これには個人差や経験値といったものが、大きく影響されると思います。
私個人的に申し上げますと・・・
○味醂干しの魚と 赤だし
○数の子と ビール
○生牡蠣と 赤ワイン
○キィウィと コーヒー
・・・などなど
これらは、1+1が 「−5」 になっているように感じます。
あと、「カレーとビール」 もイメージ的には合いそうですが合わないですね。
「1+1=0」 といったところでしょうか?
そのほか、習慣付いていて見落としがちになるものもあります。
○トーストと コーヒー
○酢豚と 炒飯
○牛乳全般
「1+1」 の結果が、「1以下」 ならば、合わないということではないでしょうか?
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (5) |
私自身は、日本酒が好きです。
ただ、前述の赤ワインと同様に、日本酒だけを呑むことはありません。
その酒に合う肴と共に頂き、味の膨らみを楽しみます。
余談ですが、純米大吟醸という製法で仕上がった日本酒は、
ある意味、肴を必要としないほど完成された酒だと思います。
ですから、良い肴が有った場合に、
純米大吟醸は、「出る幕」が無いように思います。
むしろ、ブランデーと同じように「食後酒」の位置にあるのではないでしょうか。
そんな訳で、私は「純米酒」か、「純米吟醸酒」を求めます。
そして、これらの酒が素晴らしいのは、
「肴に合わせられない日本酒は無い」ということです。
世界中のどんな肴にも、必ず「合う」日本酒が有ると思います。
たとえば、チーズを頂く場合、ワインよりも日本酒が合うのかと言われると、
そうではありません。
ですが、下手なワイン選びをするくらいなら、
日本酒の中にはそのチーズに合うものがあるはず。
具体的に言うと、和歌山の「羅生門」という日本酒は、
肴の概念を突き崩すような味を主張します。
ハンバーグでも合うような。
それほどまでに日本酒は、幅広い受け皿を持っています。
では何故、「蕎麦と日本酒は合わない」 と言うのだ?
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (6) |
なんだそりゃ? という話になるかも・・・
食べ物の相性に、「合う」・「合わない」というテーマでした。
これまでに、いくつかの例をあげてみました。
そこで初めて気付いた事なのですが、
「合う」・「合わない」という概念は、
「個体」と「液体」を、口に含む事に対して生まれるのですね。
ビスケットと、ポテトチップス。
秋刀魚の塩焼きと、鶏のから揚げ。
もう論外ですね。
「個体」と「液体」を、もう少し柔らかく言うと、
「乾いたもの」と「水分量の多いもの」でしょうか?
秋刀魚の塩焼きと、冷奴。
「合う」とまではいかなくとも、無理ではないです。
さて、本題の蕎麦です。
蕎麦に合う、液体はなんでしょうか?
ソバも穀物の一種です。
そのソバの実を、日本の食文化が「蕎麦」に作り上げました。
蕎麦に最も合う液体、それは「蕎麦つゆ」です。
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (7) |
蕎麦に合うのは、蕎麦つゆ!
って、当たり前ですね。
この国の先人が、永年かけて創意と工夫を積み重ねて
たどり着いた最高の調味料ですもの。
「蕎麦に合うように作ったつゆ」が、合わないわけがない。
最近 蕎麦を、「塩」で食べるようにと勧めるお店が増えてきました。
気持ちは解ります。
蕎麦本来の味を感じてもらおうとしての事ですね。
ですが、塩という調味料だけで、1人前の量の蕎麦を頂いて
満足できるでしょうか?
私は、無理です。
昨今は、「水そば」というものが注目を浴びています。
これも同じで、私は無理です。
なぜ、蕎麦本来の味は、シンプルに伝えられないのでしょうか?
それは、蕎麦そのものには、「旨み」が無いからです。
蕎麦に旨みが無いから、旨みの無い塩では、美味しく感じない。
蕎麦に旨みがないから、水で食べても、
食感や喉越しの良さを感じますが、美味しくはない。
そうすると、旨みは 「他から足す」 しかありません。
それが、蕎麦つゆです。
秋の「新米」は、それそのものに強い旨みが有ります。
おかずが無くても食べれる位の旨みです。
実際に、「塩のおむすび」ですらが、ご馳走になりますね。
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (8) |
このテーマも、随分と長くなってしまいました。
蕎麦と日本酒が、合うか?合わないか?を述べてきました。
最初に戻りますが、相乗効果が最大の要素だと思います。
相乗効果 ―― 異なる2つがお互いを引き立て合う。
ですが、「蕎麦」は「蕎麦つゆ」と出会った時点で、
味は「完結」していると思います。
もう他には、何も必要としていない状態ではないでしょうか?
例えば「酒盗」(鰹の腹わたの塩辛)を食べるならば、
何としても日本酒が欲しいところでしょう。
「出会いもの」というものは、それくらい相手を惹きつけるように思います。
蕎麦は、特に旨い手打ち蕎麦は、それそのもので完成していると思います。
敢えて、アルコールの手助けは要らないものです。
では、日本酒の方は、どうでしょうか?
蕎麦が隠し持っている旨味を見つけ出し、引き上げる事が出来るでしょうか?
無理です。
蕎麦には穀物としての味は有りますが、肴の要素は持ち合わせていません。
だから、この国の食文化は、「蕎麦つゆ」に多大な旨味を加え、
作り出したのではないでしょうか?
「蕎麦つゆ」と日本酒が合うから、「蕎麦」と日本酒が合うと言いますか?
無理が有りますよね。
蕎麦は、もう充分 「幸せ」 なのでは ないでしょうか?
蕎麦を愛する人に対して、「旨い」を感じさせる喜びを、
与え切って居ると思いませんか?
つづく
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蕎麦と日本酒は、合わない (9) |
・・・というわけで、これまで私見を述べさせて頂きました。
蕎麦と日本酒は合うのでしょうか?
「蕎麦と日本酒は合う」という意見の方が
過半数を占めるようです。
「蕎麦と日本酒は合わない」と言い切る方も
少なからずおられます。
これは、関わり方の違いだと思います。
蕎麦との関わり方、日本酒との関わり方、味の相性への関心度など、
人それぞれの感じ方の個性ではないでしょうか?
また個人差というなら、もっと大きな要因が有ります。
生まれ育った環境や時代、性別、生きてきた年数、
アレルギー、味の好み・・・
そういった個人個人の感性を尊重しようと思います。
日々の生活の中で、味覚から得られる満足感を
素直に喜べたら幸せですね。
このテーマも(9)までになり、長文となってしまいました。
私見にお付合い下さいまして、ありがとうございました。
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